LPガスとは?性質・都市ガスとの違いや、メリット・デメリットなどを解説
私はガス業界に15年に渡って勤務していますが、お客様から意外と多くお問い合わせいただくのが、
- 自分が使っているガスが、LPガスなのか都市ガスなのか分からない。
- LPガスようのガス器具は、都市ガスでも使えるのか?(あるいはその逆)
ということ。
特にお引越しがからむタイミングで、このようなガスの種類に関連した質問をいただくことが多いのですが、よくよくご事情を聞いてみれば、引越し先がLPガス(都市ガス)と聞いて、
- 新しくガス器具を買い替えないといけないのかと不安になった。
- 間違ったガス器具を使うと、一酸化炭素中毒になると聞いて心配になった。
そんな理由からお問い合わせくださっているのです。
同じような用途で使われるLPガスと都市ガスですが、何が違うのかを説明できる方は少ないと思われます。
この記事では、
- LPガスとはどういったものなのか?
- LPガスと都市ガスはどう違うのか?
- LPガスを使用するうえでのメリットやデメリット
などについて、共有したいと思います。最後までお付き合いください。
LPガスとは?
LPガスとは?
LPガスは原油や天然ガスなどに由来するというのはご存じでしょうか? LPガスは、
- 原油の精製過程で分離(原油精製)
- 油田の内部に滞留しているガスから分離・回収(原油随伴)
- 天然ガスから分離・回収(天然ガス随伴)
といった方法で作られ、それを圧縮するなどして液化したものを、Liquefied Petroleum Gas(液化石油ガス)を略してLPガスと呼んでいます。
読んでわかるとおりLPガス・液化石油ガスという名前は、水素、酸素、メタンといった”物質名”ではありません。プロパンやブタンなどを液化させたガスの総称として、LPガス・液化石油ガスという名前が使われているのです。主な成分がプロパンの場合はプロパンガス、ブタンの場合はブタンガスと呼んでいます。
ちなみに、LPガスとプロパンガスはよく混同されますが、上記のような理由から正しくは両者は別物(別の概念)です。慣例としてどちらの呼称を使っても通じますが、ブタンガスのことを”LPガス”や”プロパンガス”と呼ばないのは不思議ですね。
LPガスの性質
無臭・無色
LPガスは無臭で無色です。そのため、ガスが漏れがあっても気がつかず危険なことから、臭いでわかようにメルカプタンなどを添加して臭いをつけています(腐ったタマネギのような臭い)。
空気より重い
気体のLPガスは空気より重くなります。下方に滞留する性質があるので、ガス漏れに備えて設置するガス警報器は、台所の足もとなど下の方に設置します。
ちなみに、空気より軽い都市ガスのガス警報器は、上の方に取り付けられます。
熱量が高い
都市ガスと比べて、熱量が倍近く高いのがLPガス。では、コンロなどで料理をしていると、半分の時間で料理ができたり、火力が強すぎてすぐ焦げたりするのか……といわれると、そういうわけではありません。きちんと火力が調整されているので、LPガスも都市ガスも、大差ない使用感で使うことができます。
環境にやさしい
LPガスをはじめ、石炭、原油、ガソリンなど化石燃料は様々ありますが、その中でもLPガスのCO2排出量は他の化石燃料と比べて低いというメリットがありますす。
化石燃料の種類 | 二酸化炭素排出量 |
---|---|
石炭 | LPガスの約1.53倍 |
原油 | LPガスの約1.16倍 |
ガソリン | LPガスの約1.13倍 |
LPガスと都市ガスとの違い
LPガスと都市ガスの違い
成分の違い
LPガスが、プロパンやブタンを主成分とするのに対して、都市ガスはメタンが主成分です。そのため熱量にも差があり、LPガスの熱量は都市ガスの約2倍となっています。
ガスの供給方法と供給エリアの違い
都市ガスは名前のとおり、比較的都市部で活用が広がっているガスです。都市の地下には、都市ガスが流通する導管と呼ばれるパイプが張り巡らされており、その経路に近い建物では、菅を引き込むことで都市ガスを利用できます。
しかし、郊外はもとより離島や山間部など、日本では導管の整備が進んでいない地域が多いのが実情です。
LPガスは、ボンベ(シリンダーといったり、大きいものはバルク貯槽というものもあります)により供給されます。ボンベが運べるところならどこでも使用可能で、都市ガスの供給エリアはもちろん、離島や山間部、お祭りの屋台、被災地の炊き出し、キャンピングカーなど、屋内外を問わず幅広く使われています。LPガスは”分散型エネルギー”といわれており、災害の影響を受けにくく、被災時においても戸別に安全確認を行うことで迅速に復旧することが可能というメリットがあります。
使用できるガス機器が異なる
都市ガスとLPガスは、それぞれ専用のガス器具を使う必要があります。
都市ガスにLPガス用の器具(あるいはその逆)を使うと、一酸化炭素中毒を引き起こす原因になりますので、絶対に使用しないでください。
LPガスはLPガス専用の、都市ガスは都市ガス専用のガス器具に買い換えるか、ガス会社に頼んで部品交換するなどの対応を取ってください。
料金の違い
都市ガスは公共料金という性格が色濃く、現在でも上限認可は行政が行っています。毎月のガス代はLPガスに比べてお安めですが、都市ガスは初期費用は高いというデメリットがあります。これは導管の引き込みや、メーターや配管などの供給設備の整備など、もろもろ費用がかかるためです。
一方、LPガスは初期費用が抑えられるというメリットがあります。これは、都市ガスのような導管の引き込みが不要で、供給設備の規模が小さくて済むことや、供給設備の整備にかかった費用を無償貸与という形で、毎月のガス代の支払いに加算するといった工夫ができるためです(長期のリース、レンタルのようなイメージです)。
しかしながらLPガスは、都市ガスに比べると毎月のガス代が少々お高めです。その料金は供給するガス会社が自由に価格を設定していますが、仕入価格や人件費などのコストと利益などによって決まってくるため、ガス会社によってバラバラなのです。
つまり、お得にLPガスを利用するためには、契約するガス会社をキチンと見極めることが大切ということになります。
LPガスの料金が高くなってしまう理由は、こちででも詳しく解説してますので、ぜひご一読ください。
まとめ……LPガスのメリット/デメリット
ここまでいろいろご説明しましたが、最後にまとめとして、LPガスのメリットとデメリットを整理したいと思います。
LPガスのメリット
- 利用する地域・場所・シーンを選ばない(離島、山間部、一般家庭、業務用、屋外、室内、キャンプ、屋台、炊き出し……)。
- 災害に強い(影響を受けにくく、影響があっても復旧が早い)。
- 環境にやさしい(CO2の排出量が低い)。
- 初期費用が安い。
- サービス品質や価格を求めてガス会社を選択できる。
LPガスのデメリット
- 都市ガスに比べて毎月のガス代(ランニングコスト)が高くなりがち
LPガスの価格は各ガス会社が自由に設定できるので、それぞれのガス会社がそれぞれの価格で提供しており、サービスの質も様々です。
各ガス会社の提供条件などは、ウェブで見積・料金比較サービスが試せるので、もし今のガス代が高いと感じるなら、そいうったサービスの利用も検討してみるとよいでしょう。ガス代が驚くほど安くなるかもしれませんよ?