LPガスの給湯器って無料なの?無償貸与との上手な付き合い方と今後の動向について
あなたは、どんなときにLPガスのガス給湯器の購入を考えますか?
- ガス給湯器が故障したので買い替えたい。
- 家を建てるので、新しいガス給湯器を取り付けたい。
ガス給湯器の購入を検討するするタイミングは、おおむねこの2つの機会に集約されると思いますが、どこで・どのように購入するかまでご存じの方は、意外と少ない印象です。
一般的に、あまり店頭販売されていないガス給湯器は、ガス会社の無償貸与を利用した購入が多いのです。無償貸与……多くの方にとっては聞きなれない言葉だと思います。字面からは、何かを無料で貸してくれる……そんな風にも読めますね。
今回の話題は給湯器の購入を例にとって、
- 無償貸与とはどういう購入方法なのか?
- 無償貸与のメリット・デメリットは?
ということについて、15年間ガス会社に勤務してきた私自身の経験・知識をもとに解説します。
さらに補足として、昨今新聞でもたびたび取り上げられている無償貸与について、今後どうなるのかということを、新聞記事を引用して情報共有したいと思います。
無償貸与とは
LPガスに関連してよく話題にあがってくるのが無償貸与という購入方法。
簡単にいえば、
- 初期費用やガス器具代金をガス会社に負担してもらうかわりに、
- 一定の契約期間が設定され、
- その契約期間中は、そのガス会社のガスを使い続ける。
というものです。
もう少し正しく説明します。おうちなどでLPガスを使えるようにするためには、配管・ガスメーター・ガス給湯器など、様々な設備やガス器具を設置する必要があります。これらの費用は、通常初期費用としてお客様が負担するべきものですが、それなりに高額(計算にもよりますが、20~50万円程度にはなる)になるため、一度に支払うとかなりの出費になってしまいます。
そこで、それら設備の導入費用を、レンタル料と似た考え方でLPガスの料金に少しだ上乗せし、契約期間として設定した期間、薄く長くお客様にご負担いただきながらお使いいただくというのが無償貸与という方法です。
契約期間の長さは10~20年程度。契約期間中の解約は可能ですが、違約金が発生するなど一定の縛りがあります。
無償貸与のメリット
配管やガス機器の設置に要する高額な初期費用が不要というのが最大のメリットです。
無償貸与を考えるタイミングは、
- おうちを建てるとき
- 引っ越しの前後
- 故障によるガス器具の買い替え
といったイベントと重なることが多いので、何かとお金が必要になります。そんなときでも、もしもにそなえて現金はある程度残しておきたいですよね? 無償貸与を利用すれば、現金の持ち出しが少なくてすむので、かなりのメリットといえそうです。
無償貸与のデメリット
第一に、契約期間中は自由はガス会社を切り替えにくいということがあります。切り替える場合は、一定の金額または残価に応じた金額を違約金として請求されるからです。
第二に、10~20年の契約期間中に無償貸与されているガス器具が寿命を迎えてしまい、設備更新しないといけないタイミングが訪れる可能性があります。そうなると再度無償貸与契約を更新しなければならないので、無償貸与の契約期間満了でガス代が下がると思っていたのに、意に反してガス代が下がらない可能性があるのです。
無償貸与で確認したい5つのポイント
デメリットもある無償貸与ですが、メリットの方が大きいと判断されるお客様が多いのか、無償貸与を選択されるお客様は少なくありません。
ただし、無償貸与は購入とはまた違った問題もはらむので、しっかり確認しながら活用する必要があります。
無闇に高いガス料金設定をされていせんか?
当然ながら、無償貸与している場合としていない場合では、ガス料金が違ってきます。ここをしっかり確認せずに契約してしまい、損をしている方も結構おられるようです。
- 無償貸与している場合
- 無償貸与していない場合
2つのガス料金のパターンを、しっかり比較してから契約しましょう。
契約期間が満了したらガス代はどうなりますか?
無償貸与はレンタルにとてもよく似た考え方なので、契約期間を満了したからといって、必ずしもガス料金が下がらないことがあります(分割払いとは違うということです)。
ここは賢い消費者として、しっかり契約期間を確認し、契約期間満了のタイミングでガス会社の切り替えを検討するべきでしょう。
契約満了のタイミングは、切り替え元・先のどちらのガス会社からも、よい条件を引き出せるベストな時期だといえます。
違約金を切り替え先のガス会社が吸収してくれることもあるので、ガス代が高いと感じたら、契約期間満了を待たずに切り替えを検討するのも悪くない考えだと思います。
まとめ
今回の話題は、
- 無償貸与とはどういう購入方法なのか?
- 無償貸与のメリット・デメリットは?
ということについてお話ししました。
話が変わりますが、車を買うにしても、
- 現金一括
- ローン(均等、残価設定)
- リース
- サブスク
など様々な方法があり、それぞれ一長一短があり、それぞれ向く人・向かない人があります。
LPガスの無償貸与もまた同様です。
- 無償貸与をする/しないで、LPガス料金がどう違ってくるのか、面倒がらずにしっかり確認する
- ガス会社の切り替えを常に念頭に置いておき、ガス料金が高いと感じたら切り替えを検討する
ガス会社を切り替える際には、複数の会社から見積を取るのが賢いやり方です。LPガスの会社は、それぞれの会社が特色のあるサービスを展開しています。価格以外にも、注目するポイントがいろいろあるので、納得がいくまでしっかり比較検討してみてください。
最後に補足
2023年7月24日の新聞に、無償貸与について以下のような記事が掲載されていました。
経済産業省は24日、LPガス(プロパンガス)の不透明な料金請求を是正するため、ガス供給とは関係がないエアコンなどの設備費の上乗せを禁止する方針を決めた。違反した場合の罰則規定も設ける。料金の内訳明示も義務化。来年春に省令を改正し、2027年度の施行を目指す。
時事通信ニュース
この記事では、賃貸アパートなどのLPガス料金について、ガス会社が賃貸住宅(=家主さん)にエアコンやガス給湯器などを無償で設置する一方、その費用を月々のガス料金に上乗せして入居者から回収するというケースについて書かれています。
入居者から、ガス代が高いといった苦情や、請求内容が不透明だといった指摘あったのです。
このことが話し合われた会議では、料金として計上できるのは
- ガス設備や点検費用などの基本料金
- LPガスの使用量(立方メートル)に応じて発生する従量料金
の2つとし、それ以外は認めないことで了承されたそうです。
無償貸与は長年LPガス会社で行われてきた慣習であり、ローンやリースとはまた違った購入方法・考え方で、先出の新聞記事のような問題をはらむのも事実です。ただ、メリットでも紹介したとおり、そこには一定のニーズがあり、それを喜んでくださるお客様が多いのも事実です。
ガス代に上乗せされなかった設備費用は、家主さんとしては家賃に上乗せしないと回収できません。入居者は、それなら気持ちよく払えるんでしょうか?
ここ数年、新聞に取り上げられることが多くなった無償貸与。そのうち、LPガスに関連する初期費用も、お客様にご購入を前提にご案内する日がくるかもしれません。