【ガス会社社員だから分かる】LPガスが高い理由と、安く使うための節約方法を解説
ガス会社に勤務して15年。コールセンター担当者として電話を中心にお客様のお困り事を解決するお手伝いをしている私ですが、季節を問わずお問い合わせいただくのが、「ガス代が高い!」ということ。
特に秋から冬にかけて、寒くなってくる時期には一気にその件数は増えていきますが、その原因は、
- 水温が下がることによるLPガス消費量の上昇するため。
- 暖かい季節に比べて、お湯を使う頻度の上がるため。
といった理由が、かなり大きなウエイトを占めています。
しかし、こういったご説明を差し上げても、釈然とされないお客様がおられるのも事実です。
ここでは、LPガスの料金が高いとお悩みの方に向けて、
- なぜLPガス代は高いのか?
- LPガスをより安く使う方法
について、お話ししたいと思います。
LPガスの料金が高い理由
LPガスが都市ガスや電気に比べて高いのは、いくつかの理由があります。ここでは主要な以下の4つの理由にしぼってご説明いたします。
- 配送料・人件費などのコストが上乗せされているから。
- 自由競争が起きにくい環境があるから。
- 値上げしたら値下げしにくい商環境だから。
- 無償貸与の影響も大きい。
配送料・人件費などのコストが上乗せされているから
導管や電線によって各家庭に供給される都市ガスや電気と違い、LPガスはボンベに詰めて、トラックで運搬し、人の手によって設置作業をして各家庭にお届けしています。そこには、配送に関する費用や人件費が必要になるうえに「いつボンベを交換すれば、ガス切れを起こさないようガスをお届けできるか」といった配送サイクルの管理など、都市ガスや電気では考えなくてもよい配送料や人件費などのコストが上乗せされています。
自由競争が起きにくい環境があるから
ガス業界は自由競争の業界です。ということは、ガス会社どうしが価格競争して値段が下がるんじゃないか……と思われるでしょう。確かにその要素がないわけではないんですが、ここでいう自由競争とは、”行政が価格の決定に関与しない”と考えていただいたほうが、正解かもしれません。
都市ガスや電気は、その価格を上げ下げする際、公共料金という性格から行政の認可や届出が必要になります。一方LPガスは、各ガス会社が自由に価格を決めて販売しています。LPガスの価格は、ガス会社の一存で決まっているのです。
LPガスのように、毎月支払いが発生するような商品であるにも関わらず、一度契約したらなかなか切り替えの検討対象にならない商品・サービスというのは、おうちの中にも数々存在しています。
- ひかり回線などインターネットの契約
- 携帯電話
- 電気
……などなど。こういった商品・サービスは、一度契約すると、なかなか切り替えを検討しない商品・サービスといえます。理由としては、
- 面倒くさい。
- 違約金が高い(高いと思っている)。
そんな背景から、ガス会社もお客様が
「そうそうガス会社を切り替えられることもないだろう……。」
と考えるようになりますから、結果として、ガス代の高止まりを招いているように思います。
では、ガス会社は思いのままに値上げしているのか?といわれれば、そんなことはありません。それは次のセクションでご説明します。
値上げしたら値下げしにくい商環境だから
LPガスは原油や天然ガスなどに由来するというのはご存じでしょうか? LPガスは、
- 原油の精製過程で分離(原油精製)
- 油田の内部に滞留しているガスから分離・回収(原油随伴)
- 天然ガス田で生産されたもの(天然ガス随伴)
以上のような方法から精製されています。それらガスを液体化したものを、Liquefied Petroleum Gas(液化石油ガス)、略してLPガスと呼んでいます。
2019年の資源エネルギー庁調べでは、サウジアラビアやアラブ首長国連邦から約70%近いLPガスが輸入されています。
これらの国々から輸入される代表的な石油製品といえ『原油』。その原油から精製される代表的な燃料といえばガソリンです。ガソリンスタンドの店頭をご覧いただければわかるとおり、ガソリンは頻繁に価格が変わります。ガソリン価格は、
- 価格が変動することに、比較的お客様の理解が得られやすい。
- 看板に価格を掲示するので、お客様に価格を周知しやすい。
- お客様も、価格情報をもとに給油する店を選択が容易。
という特徴があり、比較的柔軟な価格変更が可能なのです。
ではLPガスどうでしょう? 実はLPガスもガソリンと同様、仕入値は変化しています。ただ、それを売価に反映させるのはちょっと大変なのです。
例えば私が勤務しているガス会社では、価格の変更がある場合にはすべてのお客様に文書にてお知らせすることにしていますが、数万件のすべてのお客様に対し、文書でお知らせすると、かなりコストがかかってしまいます。
また、値下げするときはいいのですが、値上げとなるとどうでしょう? 特に賃貸物件にお住まいのお客様にとって、私たちのLPガスをご利用いただいている状態は、「選んで使っている」というよりも、「仕方なく使っている」という考え方が近く、むやみに値上げをすることは、ガス会社としても大変気が引けることでもあるのです。
以上のような事情から、基本的に値上げはギリギリまで我慢しているガス会社がほとんどです。我慢に我慢を重ねて、やっと値上げをするので、仮に仕入値が下がる局面がおとずれたとしても売価を下げることが難しいのです。
無償貸与の影響も
無償貸与とは、簡単にいえば、おうちのガス配管や給湯器などの設置に必要な費用(初期費用)を、ガス代に上乗せするということです。
少額で長期間に渡る分割払いのようなイメージでお支払いいただくので、初期費用がかからないというメリットがある一方、毎月のガス代が高見えしてしまう最大の原因はこれかもしれません。
LPガスを使えるようにするための初期費用は、都市ガスに比べれば安価なものの決して安くはありません。おうちの新築などのタイミングでこういった初期費用が必要になるため、何かとお金が必要な時期に初期費用のご負担をお願いするのが難しいということもあり、無償貸与はかなり一般的に普及しています。
LPガスを安くするには?
では、どのようにしたらガス代を安くできるのか? ということについてお話ししてみたいと思います。
節約方法は、大きくまとめて、
- キッチン
- お風呂
- リビング
の、3つに分類できます。
キッチンでのガス代の節約術
- 電子レンジを活用して野菜の下ごしらえする。
- 火力は強火ではなく中火にする。
- 圧力鍋など時短調理器具を活用する。
- 水かぬるいお湯で食器を洗う。
- 余熱を使って料理する。
- お鍋の底の水滴は火にかける前に拭いておく。
- 料理は多めに作って冷蔵・冷凍保存する。
- コンロのバーナーはこまめに掃除する。
- ストーブを使って調理する。
お風呂でのガス代の節約術
- 給湯温度の設定は低めにする。
- 浴槽の湯量を少なめにする。
- お風呂に入っていないときはリモコンのスイッチをオフにしておく。
- シャワーは短時間で済ませる。
- 節水シャワーヘッドに交換する。
- 浴槽はこまめにフタをする。
- 入浴の間隔をなるべくあけない。
- 追い焚き機能の使用回数を減らす。
- 運動に興味があるなら、スポーツジムに通うのもオススメ。
リビングでのガス代の節約術
- 寒いと感じたら厚着する。
- 設定温度は低めにする。
- ファンヒーターのフィルターはこまめに掃除。
- サーキュレーターを活用。
まずは使い方を見直して節約
「ガス代が高い!」と、お怒りになってお電話をくださるお客様……よくよく聞いてみれば、使い過ぎてらっしゃる方が多いのです。夏場でも一人暮らしで3万円とか、ビックリするような使い方のお客様もいないではありません。
とにもかくにも、ガスの節約は使い方の見直しから。
ガス代の節約術については、こちらの記事が詳しいので、ぜひご一読ください。
まとめ
今回の記事では、
- LPガスはなぜ高いのか?
- 安く使う方法はないか?
といったことについてお話ししました。
LPガスの価格は各ガス会社が自由に設定できるので、それぞれのガス会社がそれぞれの価格で提供しています。
各ガス会社では、自社のホームページなどで価格情報を公開している会社もあるので、それをつぶさに調べていけば、安くガスを提供しれくれる業者が見つかるかもしれません。しかし、それはなかなか手間がかかって大変です。
特にLPガスは、迅速な緊急時対応が求められることから、提供エリアが限られる(拠点から30分圏内など、法律によって定められているのです)ため、せっかく見つけたガス会社が、必ずしもお宅にガスをお届けできるとは限らないのです。
これらの情報収集には、ウェブで見積・料金比較サービスが試せるので、そいうったサービスの利用も検討してみるとよいでしょう。思いのほか、高いガス代を支払っている可能性があるかもしれませんので、ぜひお試しください。
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